俺は生まれつき、音が聴こえない。

完全ではない。

だけど、途切れ途切れ。

だから、本当の音も知らない。

母さんや父さん、姉さんの声も分からない。

誰かがそばにいないと音が聴こえない分、危険がたくさんあった。

外に出れば車や自転車が、家にいても火事が起こるかもしれない。

その時は逃げることも出来ない。

だから母さんは、いつも俺のそばにいてくれた。

苦手そうな勉強もして、手話も上達して。

父さんは、難聴のことについていろいろ調べて。

姉さんも、協力してくれて。