悠と出会ったあの日から、私の日々は変わっていった。
毎日学校終わりに公園で待ち合わせた。
ブレザー姿の悠とセーラー服姿の私。
噴水に腰掛けて、ギターを教わったり、悠の歌を聴いたり。


「高校、綾はどこ目指してんの?」


話していくうちに同い年だと知った私たちは、高校のことも話すようになった。


「西高かなぁ。悠は?」

「まじ!?俺も!俺も西目指してる!」

「えっ、本当!?」

「二人とも合格できたら、軽音部入ろう!」

「西高って軽音部ある…?」

「なかったら作るんだよ!」

「えぇっ!?」


悠は目をキラキラと輝かせた。
悠の夢に、いつの間にか私の夢もリンクしていった。

バンドをやりたい。
悠となら、そんな夢も叶えられそうで。


「頑張ろうな。バンドも、受験も。」


受験より先にバンドが来てしまう悠に、悠らしいなぁと笑いが込み上げる。


「じゃあ、また明日!」

「うん。またね、悠!」


オレンジ色の夕焼けに、降り積もった雪がキラキラと反射する。

何度も何度も繰り返す、また明日。
それは、もし高校がバラバラだったとしても、変わることはない。
そんな確信があった。
今みたいに、学校が終わってから待ち合わせて。

でも、そんな想定は必要なかった。


「綾!」


合格発表の日。
自分の受験番号を見つけた途端に聞こえた、その声。


「悠!」


口元まで巻かれたマフラーからふわふわと白い息が上がる。
ブレザーの上からコートを羽織った小柄な彼が走ってくる。


「け、結果…!」


上がった息を整えて、彼は私の目を見つめる。


「受かったよ。」


私の一言に、彼は満面の笑みで受験票を私に開いて見せた。


「俺も、受かった!」


違う制服の今の私たちは、これから同じ制服になる。

放課後待ち合わせていた私たちは、これから毎日朝から会うことになる。


「やったな、相棒!」


無邪気に笑った悠。

相棒という響きが、妙に心地よくて、嬉しくて。


「そうだね、相棒!」


これからの毎日に、希望と呼べそうな何かを感じた。