机上には地図やら資料やらと、数々の書籍や紙が敷き詰められている。


眼鏡をかけ、濃い灰色の髪の毛を後ろに流している男性_この国の参謀総長であるバルトロ・カプアーノが地図を指差しながら真剣な表情で説明をしている。騎士団総長のローゼンバーグと巫女のソンジュも真剣な顔つきで話を聞いている。翼は頬杖をつき、地図を眺めるも聞きなれない地名や日本にいた時にはほぼ関わり合いのなかった大自然の写真に、脳みそはショート寸前だった。



「少し休憩を入れましょう」



見兼ねたカプアーノの提案に誰よりも目を輝かせたのは言うまでもなく翼だった。


翼が「ふー……」っと椅子の背もたれに盛大に凭れかかると、資料の隙間にティーカップが置かれた。スライスされたレモンが浮かび上がる紅茶から微かに見える湯気。次は「はー……」とため息を漏らした。



「紅茶のご気分ではございませんでしたか!?」



慌てる侍女_リタに翼も負けじと慌てて手を振り否定した。



「ち、違う! 違う! ちょっと疲れただけ!」



そういうとリタはホッとした表情を浮かべ、愛らしく微笑んだ。


疲れたからというのもあるが、たまには冷たいものを飲みたいという気持ちが本音だった。荒れ果ててしまったこの世界での氷はとても貴重で高価なもので、基本は温かいか常温の飲み物を飲んでいる。プレジール国の王宮で生活している為、言えば冷たいものを出してくれるだろうが、大事に使っていると知った時から言えなくなってしまった。


_キンキンに冷えた炭酸一気飲みしたい。


そう思いつつも、目の前に用意された紅茶を一口飲んだ。