合宿の肝試しが終わりに近づいてきた頃、ベストカップル賞を光希に頼んで、残りは私と珱ちゃんと2人で作業していた。

「珱ちゃん、今日はありがとうね!」

珱『大丈夫だよ。風ちゃんは大丈夫??結構これ作るの大変だったんじゃないの?』

「大丈夫だよ!練習キツイ分、肝試しとかでもいいから少しでも息抜きしてもらいたかったし、思い出も作ってあげたかったんだ。」

珱ちゃんは私の頭を優しく撫でて、私が照れちゃうくらい褒めてくれた。珱ちゃんは本当に素直で優しくて、相手が嫌がることは絶対にしない。珱ちゃんといると心があったかくなる。肝試し最後の組みが終わり、片付けに入ろうとして立ち上がった時、私は立ちくらみが起きてよろけそうになったけど珱ちゃんが支えてくれた。

珱『風ちゃん!!』

「珱ちゃん…あ、ありがとう。」

珱『やっぱり、遅くまでこれ作ってて寝不足なんでしょ!ダメだよ、ちゃんと辛い時は言わないと』

「ご、ごめん。」

珱ちゃんが私を支えてくれているせいかな…珱ちゃんが頼もしくみえてカッコよくみえて、私の心臓がドキドキしてる。私はまともに珱ちゃんが見れなくて目が泳いでいた。

珱『次、こういうのをやる時は一人でやるんじゃなくて、僕に声かけて?』

「え?」

珱『それなら、風ちゃんも無理しないですむし、作業も早く進むでしょ?』

「でも、悪いし…。」

珱『全然悪くない!少しでも風ちゃんの力になりたいし、僕にとって友くんも風ちゃんも大事な人なんだから、これぐらいお安い御用だよ!』

「あ、ありがとう」

珱ちゃんの万遍な笑顔をみて、私は心臓が破裂しそうなくらいドキドキが早くなっていった。私は、どうしちゃったんだろうか…。みんなのところに戻って、今回のベストカップル賞を主将ペアだと参加した人の前で発表して、みんなで2人にお祝いの拍手を送って、肝試しが終了した。

友喜『あ〜つかれた…。』

「お疲れ様^ ^;」

友喜『てか、おかしくね??何で俺だけ、5回も入らないといけないわけ?』

「だって、仕方ないじゃない。なぜか友喜目当ての子が多いんだから!友喜のどこがいいんだか」

友喜『風華と違って性格いいからな!』

「はぁ?あんたよりは性格はマシよ!あんたは顔だけじゃない!」

友喜『顔も大事だぜ??風華は顔もイマイチだかんな^_^』

「友喜〜!!あんたはいつもいつも〜」

珱『風ちゃん、落ち着いて^_^;友くんもあんまりからかっちゃだめ!』

友喜『風華をいじると楽しいんだよな!不細工な顔が面白い(^^)』

珱『友くんらしいけど、ほどほどに!風ちゃん、顔真っ赤だよ?大丈夫?』

「ひぇ?!あ、あ、だ大丈夫だよ!!」

珱『あんまり無理しちゃダメだからね?』

「うん」

友喜『……。』

珱ちゃんの顔が合うたびに、顔が熱くなって心が跳ね上がり鼓動が早くなった。私は急いで光希たちのところへ戻った。
そして次の日からまたキツイ練習をみんな必死にこなした。

合宿が終わり、公式戦の2日前の部活帰りに友喜にメンバーについて話した。今後のバスケ部のことを考えて、友喜を控えメンバーにして、極力バスケ部員メインにすることや戦略について話した。バスケの話をしているときは何故か喧嘩せずにいれるんだよね。

友喜『そんな感じだな!まぁ、相手が萌川だから作戦通りには行かせてくれないと思うけどな。』

「そうだね。鞠子君はディフェンスがめちゃくちゃ上手いからね。なかなかポイントくれないと思うし、市村君はスピードは天下一品だしね。萌川君はああ見えてすごくいい攻撃仕掛けてくるからね。」

友喜『相手褒め過ぎじゃね?』

「だって、本当のことだし。でも、負けないよ!輝くんいるし、友喜もいるし。」

友喜『俺が強いって?』

「友喜は強いよ?!私、好きだもん。」

友喜『は?』

「友喜がバスケしてるときの顔。何か無邪気というか何というか。だから、今回参加してくれるって言ってくれたときは、嬉しかった。」

友喜『風華ーあのさー『風ちゃ〜ん!』』

友喜と話してると、横断歩道の向かい側で声がした。私と友喜は前を向くと、珱ちゃんが手を振って近寄ってきた。
私は顔を真っ赤にして、珱ちゃんの話を聞いた。
珱ちゃんの話は公式戦に行って応援してくれるっていう話だった!私も一層力が湧いてきた。
友喜が言おうとしたことを、私は後から後悔するとも知らず家に帰った。

試合当日

「……。」

バシッ!

「いった!友喜なにすんのよ!」

友喜『何でお前が緊張してんだよ!』

「だって〜」

友喜『お前がバスケの大会で緊張なんて、似合わな過ぎ。お前は堂々としてればいいんだよ!相手がどんな奴だろうと俺がいる限り負けねぇよ!』

「あんたね〜。でも、友喜と輝くんがいるから私は心強いよ!それに、他の人たちも最初と比べていいプレイできるようになったしね!」


第1試合目、萌川くんが通っている美園学園とのゲームが始まる。


みんな、合宿前と比べると断然成長してるけど、やっぱり萌川君たちには追いつくことで精一杯。輝くんがいるおかげで、点差はそこまで離されてはいないが、萌川くん達はまだまだ余裕がある。
1クウォーターの半分が終わる頃には、10点差が付けられていた。

「友喜、アップしといて!」

友喜『もうアップ済ませたから、いつでもいいぜ!』

「予定通り第2クウォーターからお願い!」

第1クウォーターが終わり、第2クウォーターが始まった。友喜が入って、こっち側に流れが来ているが、全然差が縮まらない。

イライラが募っていたころ、友喜がボールをラインから出した。そしてタイムアウトをとった。
みんなはベンチにもどってくる。

「ねぇ!どういうこと!?さっきのプレイは!」

輝『どうした?タイムアウトなんて』

「輝くん、友喜が入ってから、友喜ばっかりにボールパスしてるの気づいてる?」

輝「そんなことないと思うけど?」

「じゃあさっき、先輩はフリーだったのに何で友喜にパスしたの?」

輝「え…ごめん見えてなかった」

「今、このメンバーで輝くんが1番友喜に甘えてる。確かに友喜は強いし頼りたい気持ちはわかるけど、これからも友喜に頼るつもり?次の試合では、友喜はいないんだよ?それと、」