「やっぱ、気分悪いよね。ごめん、無かったことにした方がいいね。ごめん」


それはちょっとわかってたことだった。

だって気分良くないでしょ。


貰いものをもらうなんて。


気にしない人もいるけど必ずしも細野がそこに当てはまるとは思えない。


私は困ってるけど、細野のことだって考えなきゃいけない。


失敗したよなあ…。



「いや、そうは言ってないよ。ただ、その方はいいのかなあって」


眉を寄せて困ったように微笑んだ。


それを見て私は、押しちゃうことにした。


この調子なら、いいって言ってくれる気がする!


「いいの、いいの!人にあげてもいいって言ってたし。いやむしろもらって!人助けだと思って」


「え、じゃあ…」


キーンコーンカーンコーン。



なんで今なるかなあ。


昼休み終了の合図である本鈴は、みんなを静かにさせる。


次は国語。


国語の先生は短気で有名だから本鈴で席につく子が殆どだ。


入学して直ぐ、チャラい男子が少し授業に遅れただけで、丸々1時間お説教タイムになったほど。


あんな風に晒し者にされるのはごめんだ。


「ごめん、また後で」



細野もそう思っているのか、眉根を下げ、手を挙げてそう言った。




私のうん、は先生のドアを開けた音で消え失せて、細野に聞こえたかどうかは分からなかった。