今は、菅谷さんが八木さんを好きなことを知ってるから。
それなのに……。
こんな風に動揺してしまう自分に対して、戸惑ってしまう。
別に、二人が付き合っていたことなんて、今は関係ない。
御園生さんが誰と付き合っていたかなんて。
「あ……過去の話だよ?今は付き合ってないのは確かだし」
八木さんが慌てて弁解めいた言葉を口にしたことが不思議だったけど。
それほど私が彼らの過去に対して、反応してしまっていたのかと思って恥ずかしかった。
「完全な俺の片想いだから……情けないけど」
どうしてこんな風に誤解してるんだろう。
「片想いだから……想いが通じないから、白川さんと付き合い始めたんですか?」
「違う!」
即座に否定した八木さんに、私はホッとした。
「好きでもない人と付き合ったりしない」
はっきり告げた八木さんの表情は真剣だった。
だったらなおさら気になる。
白川さんとの噂はデマなの?
でも、私は見ている。
あのホテルでのキスを。
じゃあ、真剣に付き合ってるの?
頭の中がぐちゃぐちゃだった。
聞きたいことが山ほどあるのに、聞けなくて。

