「随分酔ってるみたいだし、今日はもう帰られた方が……」
「ん、ごめん……大丈夫だから……」
右手を上げてヒラヒラと振る手は力なく、間もなくテーブルの上に降りた。
八木さん……。
きっと、飲まなきゃやりきれない事があったんだ。
「タクシー呼びましょうか?」
初老のバーテンダーが気をきかせてくれたけれど、どうしたらいいんだろう。
八木さんをこのままにはできない。
でも、菅谷さんが来るかもしれないのに。
「タクシーお願いします。」
思いきって声を掛けた。やっぱり八木さんをこのままにはできない。
バーテンダーがタクシーを呼んでいるうちに、私は八木さんと自分の支払いを済ませてから、菅谷さんにメールを打った。
『急用ができてしまって、すみませんがお先に失礼します』
少し迷ってしまった。
菅谷さんに八木さんの事を話すかどうか。
こんな風に酔っているのは多分白川さんとの事が少なからず理由にある気がした。
だとしたら、ここに菅谷さんを呼ぶのはどうなのかなって。

