けれど。

思ったより、皆の反応はなかった。

なぜなら、さらにそれを上回る話題が一部の社員の間を駆け抜けたから。








「八木さん、ついに白川と付き合い始めたみたいよ~!」

ランチタイム。

窓際の女子社員の一人が声を低くして言った言葉は、少なくともその場半径5メートル辺りまでは聞こえていた。

彼女が元々よくとおる声の持ち主なのか、本人は小さく言ったつもりが、興奮していた為に大きくなっていたのかは分からないけど。

私は彼女達がいたテーブルの隣を片付けていたため、なんなく聞こえてしまった。

「なにそれ~!ガセじゃないのぉ?」

「でも、最近よく一緒にいたよね」

「これ、美香本人からの情報だから」

「なにそれ?」

彼女達の会話は筒抜けで、私はテーブルを片付けながら、回りを見回し菅谷さんがいないか確認した。

「美香昨日と同じ服できたからさ、からかったら……」

「たら……?」