「なに頼みますか?」
御園生さんに声をかけると、彼は首を左右にふった。
「このあとまだ仕事場に戻るから、酒は止めとくよ」
「え?仕事あるのに来てくれたんですか?」
「……話があるんだろ?」
近くにあったお冷やに手を伸ばし、一口飲んだところで御園生さんは私を見て言った。
「意地でも来いと脅されたからな、小幡のメール」
「ごめんなさい……私が小幡さんにお願いしたんです」
まさか、仕事の途中で来てくれるとは思わなくて、申し訳なくなる。
「お前も、小幡に頼まず直接メールでもしてこいよ」
あ……そういえば私も、御園生さんの携帯のアドレス知ってるんだった。
「ばぁか」
*
「で、八木の事か?」
「御園生さん知って……?」
話す前に八木さんの名前が彼の口から出てきて驚いた。
「いや、出張2週間前からだったから、詳しくは知らね。でも大体の話は小幡に電話で聞いてる」
「社食では八木さんに会わなくなったし、白川さんの事も噂だけだから、よく分からないんだけど。」
「あの社食のカレーバカが、一切社食でカレーを食べてないなんてな。」
心配するべきはそこじゃなくて……。
「会社には来てるみたいだし、仕事も問題ないみたいなんですけど……最近少し元気ないって噂も聞くし……」
いつも明るくてみんなに慕われてる人だから、彼の様子が普段と違うとよくわかる。
社食でランチを摂る女子社員の話題にもなっている。
八木さんが白川さんと付き合ってるなんて噂をしていたのは、同じ営業部の女子社員達だったし。

