「帰ってきたら、居酒屋に来るようにメールしておくよ」
小幡さんの言葉に頷き、私も二人と飲みにいくことにした。
「八木にも一応メールしておくよ」
小幡さんは言ってくれたけど、菅谷さんも私も、八木さんが来てくれる可能性は少ないとその時は思っていた。
*
「出来上がるの早いだろ……」
あきれた口調でこぼしたのは、スーツ姿の御園生さんで。
「お!出張お疲れ様ですっ」
小幡さんは、中ジョッキを御園生さんに向けながら大きな声で言った。
隣で飲んでいた菅谷さんは、既にほろ酔い以上泥酔未満の調子で、御園生さんが来たことにも気付かない。
「お帰りなさい」
こういう時どういう言葉をかけるべきか少し迷った結果、私は御園生さんにそう声を掛けた。
「おぅ」
御園生さんは座敷に上がり、私の隣に腰かけた。
「お前ら人のこと呼んでおいて先にくたばるなよな」
「お前が来るの遅すぎなんだよぉ」
「あー、御園生来てたの?」
菅谷さんに至っては、御園生さんの顔を見るなり、両手を前に差し出し、「お土産のカニはぁ?」とのたまった。
「菅谷さんってば……」
「お前ら、カニより俺が来たことを喜べよ!」
自分よりもカニの存在価値が高いことに不満を露にして、御園生さんは二人の頭を小突いた。

