『御園生ってさ、不器用なヤツなんだよね』

「そうなんですか?」

私には分からない、長く付き合ってる菅谷さんや八木さん達だけが知る事なのかもしれないけど……。

「意外です。御園生さんってなんでも器用にこなしていく人だと思っていましたから」

『あは、確かに器用だよ?仕事なんかはね』

「俺様だし……?」

『……でもさ、アイツってば好きな人に対しては、超不器用だよ?』

好きな人には?

「菅谷さんは、知ってるんですか?御園生さんの……好きな人のこと」

『んと、』

沈黙が続いた事に、聞いてはいけないことだったと咄嗟に「ごめんなさいっ」と謝る。

『……ごめんね、実は私も本人から直接は聞いてないんだ』

「そうなんですか。もし知ってるならその人が、今回の噂の事を誤解しないように伝えたくて……」

御園生さんも、菅谷さんも私の為に協力してくれるから。

「少しでも、力になりたくて……」

『橘ちゃん……』

「あ、でも御園生さんにとっては余計なお世話かも知れないんですけどね」

あはは……と笑う私に菅谷さんの優しい声音が耳元に響く。

『私から言えることは一つだけだよ。橘ちゃん、人の噂とか、そういうの気にしてアイツから離れたりするのだけは、しないでね』

「菅谷さん?」

「お願い」

妙に真剣な菅谷さんの声にとまどいながらも、私は「はい」と答えていた。