「じゃあ、小幡彼女頼むな」

側で不機嫌な様子の白川さんの方を見ながら、御園生さんは小幡さんにそう頼み、小幡さんは慣れた様子でそれに従った。

「じゃ、橘さんまたね」

小幡さんの言葉にお辞儀で返し、彼らの背中を見送った。

なんか、慌ただしかったな。

でも、楽しくもあったけど。

余韻に浸り、ぼうっとしていた私はふと御園生さんと二人きりになっている事を思い出した。

隣にたつ御園生さんも黙ったままで。

なんだか、居心地が悪い。

……なんで黙ってるんだろ?

「悪かったな、なんかバタバタして。」

「いえ、楽しかったですよ。……でも、菅谷さん大丈夫なんでしょうか?」

「あぁ、たまにああなるから、明日にはけろっとしてるし、心配ない」

よかった。

ホッと息をついて、また黙り込んだ御園生さんを見る。

あれ?

御園生さんの顔色、なんだか悪くない?

店の外灯に照らされて見えた彼の顔色が、青白く見えた。

「……御園生さん?」

「あ……?」

俯き、前髪が目にかかった状態で彼の表情はよく分からない。

でも、おかしい。

「御園生さん?」

彼に近寄り、彼の腕にそっと触れる。

途端、御園生さんの身体が私に寄りかかってきた。

咄嗟の事で、彼の体を抱き締めたけれど、体重を支えきれず店の壁に背中をぶつける形でなんとか御園生さんを支えることができた。

「……悪い。……急に動いたから……酒回った」

そう言いながらも、息も絶え絶えな様子で。

えっと、どうすればいいんだっけ?

「タ、タクシー拾いますからっっ!」

御園生さんをなんとか支え起こし、彼の体を店の壁にもたれさせた。

タクシー呼んで来なきゃ。

近くの通りを運良く停まっていたタクシーを見つけ、運転手さんをつれて御園生さんのところに戻り、私達はなんとか彼をタクシーに乗せることができた。