「菅谷、帰るぞ?」

八木さんは、菅谷さんの耳元で一言そう言うと、菅谷さんの細い体をヒョイと抱き上げた。

うわぁ……、お姫様抱っこしてる。

見ているこっちが照れてしまう。

「や、八木さん!」

白川さんの悲鳴に似た声で呼ばれた八木さんは、菅谷さんを抱いたまま顔だけ白川さんに向けた。

「ん?」

「わ、私もちょっと酔ったみたいで……送ってくれません?」

精一杯落ち着こうとしつつも、目の前の二人の様子をまっすぐ見れず動揺を露にした白川さんの気持ち……私には分かる。

でも、八木さんの行動があまりにも自然で口を挟めなかった。

「白川さんごめんね、コイツ送らないと……小幡、白川さんのこと頼める?」

「オッケー」

「私はっ、」

白川さんの声が聞こえていないのか、八木さんは菅谷さんの荷物を指に引っかけ個室を出る。

「八木、タクシー捕まえてくるわ。」

御園生さんが二人の後を追い、私も部屋を出て彼らの後をついていった。

御園生さんが支払いを済ませ、店を出てタクシーに二人をのせた後、私達の側まで戻ってきた。