「舞夏ちゃん、今いくつだっけ?」
カレーの列に並ぶ社員が途切れた頃、花田さんはパイプ椅子に腰掛けながら聞いてきた。
今年48歳になる花田さんは、高校生の息子さんが二人いて、大学受験に必要な学費の足しにと、この社食でパートで働いているらしい。
「24歳になります。」
「告白しないの?」
「花田さん?」
焦って体勢を崩した私は、重ねてあるお皿をもう少しで倒してしまう所だった。
「ライス大盛りを特盛にしている位じゃ、伝わらないわよ?」
窓際でカレーライスを口に運ぶ八木さんを指差した花田さん。
彼女にはいつの間にか、私の気持ちを知られていた。
どうしてバレてしまったのか、分からないけど……。
特盛だって、3回に1回位だったのに。
「告白なんて、考えた事もないですよ」
本当にそう。
この社食で彼を見かけるようになって、気付いたら彼の姿を探している自分がいた。
いつも、彼の回りにはたくさんの人がいて、楽しそうに笑っていた。
男女問わず慕われているのが分かった。
そんな彼に恋をしてしまった。

