「菅!八木!お前ら、馬鹿にしてるだろ……」

御園生さんは八木さんと菅谷さんを睨みつけた。

「やだぁ、まさか!御園生さま飲み物なににします?ご注文させていただきますわ」

菅谷さんは、御園生さんにメニューを開いて渡した。

「……ったく。」

すねた様子で受け取りながら、御園生さんは私へメニューを渡してくれる。

「俺は生ビールで。お前、飲めるよな?」

「あ、はい。」

メニューを開いて見る。

「コレ、飲みやすいと思うよ」

そう言って、目の前に座っていた八木さんがメニューの中を指差した。

「あ、ありがとう」

「いや、残業お疲れ様。付き合わせちゃって大丈夫?」

労るように声をかけられて、思わず顔が緩んでしまう私に、容赦なく鋭い視線が刺さった。

「八木さん、食べ物次になに頼みます?」

甘く高い声音。

私に向ける視線と、真逆の甘さに、八木さんは普段と変わる事のない表情で答える。

「白川さんは何にしたい?」

「んと、八木さんが食べたいもので」

語尾についたハートに気づかない人間は、その場にはいなかっただろうと私は思った。

「サラダ系と、串盛り合わせでいい?」

八木さんも、心なしか照れた様子で彼女を見ている。

「オイッ、」

不意に耳元で囁く声と、 右肘を衝かれた衝撃で私は思わず呻いてしまう。

「御園生さん?」

彼は顎をクイッと、八木さんの方向へ向けた。

「あれくらい、女っぽくすりよってみせろ」

は?

「む……無理ですよっ」

「なにが無理なの?」

私の言葉を拾い、菅谷さんが私と御園生さんの真正面から体を乗り出してきた。

「色気がねぇって言ったんだ」

「色気?」

菅谷さんがキョトンとする。

そして、私の顔をジッと見つめてきた。