「行くぞ、腹へった」
既に背中を向けて進む、御園生さんを追いかける。
でも、八木さんと白川さんって既に付き合ってるわけじゃないのかな?
両想いみたいだし、今さら私がでばっても……。
「またなんか余計なこと考えてるだろ?」
「えっ?」
足を止めず、前を進みながら御園生さんは話す。
「アイツみたいなタイプは、真正面から来られるとグラグラ揺れちまうもんだ。」
「揺れる?」
「大学の時のアイツは、浮気性の女のNo.2みたいな役ばかりされてた。真面目で優しいヤツだから、切り捨てることもできなくてダラダラとな」
八木さんにそんな過去があったなんて知らなかった。
「結局いつも傷つくのはアイツの方で……就職活動中のアイツは、ボロボロだったよ。本当なら俺と同じ会社に入社できるはずだった」
「御園生さん……」
本当に、八木さんと仲がいいんだ。こんな風に心配できるなんてすごく……温かい人。
普段のちょっと強引で冷たく見えている御園生さんとは、違う一面。
「だから、俺的にはお前みたいなヤツが八木と付き合えば……安心だって、」
「八木さんにも好みがあると思うんですけど……」
自分に自信がない私にはハイレベルな要求ですよ、それ。
「だから、真正面から行けと言ってる。お前みたいなタイプから告白されればアイツは無下ににはしないよ」
「随分、強引な言い分ですよね……?」
「言ったろ?……まぁ、お前もわるくないんだからって」
随分強引だけど、この人なりに私の事を応援してくれているのかな?
先を行く御園生さんの背中を見ながら、私は少し温かい気持ちになった。

