なにか怒らせるようなこと言ったかな私。

同情って連呼したのが駄目だったのかな。

もう放って欲しくて、御園生さんが私のこと気にしなくていいって言いたくて。

「御園生さ……?」

急ブレーキが掛けられ、スポーツカーはシティホテルの前に止まった。

ここは……?

車から降りた御園生さんは、助手席側に回り呆然とする私を車から引きずり下ろした。

ちょっ……!

なんでホテル?

「御園生様、お帰りなさいませ」

近寄ってきたベルマンに、車の鍵を渡して「車を頼む」と言ってからホテルの中へ入って行く。

真正面にあるフロントへ進み、部屋の鍵を受けとると、奥のエレベーターホールへ進んでいった。

ここまでの行程を、御園生さんは私の右手首を掴んだまま、喋りもせず前を睨み付けるように進んだのだった。

私はといえば、彼の怒った横顔が怖くて。

掴まれている右手首が痛くて。

なにも言えず、ただ恐怖と痛みにひたすら耐えていた。

今なにが起こっているのか、これから自分がどうなるのかとか考える余裕さえなかった。

これまでにないくらい怒りを露にする御園生さんを、ただ呆然と見つめるしかできなかった。