バスケットボールをしている青柳先輩を何回か見かけた。
 いつも同じ仲間とやりあっているようだった。
 途中で目が合った今日、青柳先輩はゲームから抜け出してこちらにやってきた。

「いいんですか」
「交替入っているし、いいんじゃね?」

 交替ではなく、先輩が抜けてひとり足りなくなったから大笑いしながらお仲間が途中参加したようにしか見えないのですが……しかもこっちを指さしながら他の皆さんと冷やかしはじめた。
 ああ、ゲームそっちのけ。ボールが止まってしまった。

 これ以上邪魔するのも忍びなくて、廊下に移動した。


「ひとつ、言わせてもらいたいと思って」

 私たちの所属サークルはバスケットボール関連ではない。
 用もないのに体育館に来ていたのはわけがあった。
 ここに来ればまた青柳先輩に会える。
 会いたかったからだ。

「人違いって言ったの、嘘じゃないですか。ちゃんとうまいじゃないですか。なんで嘘なんか、ついたんです?」