「嫌なら思った時点で言ってよ。俺はなんにでもなれる。友人でもそれ以上でも以下でも」
「すみません、あの」
「なに」
「あの、手はじめに、もっとゆっくり歩いてください。いろいろと、聞き捨てならないお話をうかがいたいのはやまやまなんだけど、追いつけない、歩くの大変で」

 照れるのもぶっきらぼうになるのも構わない。
 ただ、注意を払わないと、あなたはずんずん行っちゃって周囲を置き去りにするのですよ。
 運動不足もあって、私の鼓動は速くなっていた。


 そこまで言うと、ようやく青柳先輩も歩調を緩めた。
 私に向かって手が差し出される。

 私はえいっという感じでその手を取った。
 そのまま横並びになった。


 青柳先輩はなにも言わない。
 私もなにも言わない。
 黙って、手を繋いで歩いた。
 このドキドキはいつになったら収まるのだろうと、そんなことを考えながら。

   -fin-