「課長、もう仕事も今日のところはひと段落つきましたし、お帰りになられてはいかがですか?」




由奈が俺を見てそう言った。




でも…俺の目を見ていない。




「そうですよ!せっかく奥様が来てくださったんですから、帰りにお食事なんかして帰ればいいのにー。」




由奈に続き、お気楽な瀬尾が微笑む。




佐伯部長はというと…




何も言わず、ただ俺を見ていた。





どうする?




どうすればいい、俺?




俺の方を向きながらも、一向に俺の目を見ようとしない由奈。




お前、今本当は何を考えてる?




俺が何も答えられないでいると、佐里がニコッと微笑みながら言った。




「みなさん、お気遣いありがとうございます。でも私は一人で大丈夫ですから。頑張って働くこの人を、会社でみなさんが支えてくださるのならば、私は家で主人を支えますね。では…」




佐里は一礼し、ドアをパタンと閉めた。




その瞬間、由奈が言った。




「追いかけてください、課長。残りは私たちでやりますから。」



「え、ちょ…」




そんな由奈に背中を押され、無理やり会議室の外に出されてしまった。