「…課長?かーちょーおっ!!」
「えっ?ああ、ごめん。」
瀬尾が俺の目の前で手をブンブン振っている横で、由奈が心配そうに俺を見る。
「ごめんごめん、ちょっと考え事。」
思い出に浸っている場合じゃないな。
せっかくのプロジェクトなんだ。
しかも、この最高のメンバーで。
気合い入れていかないと。
それからの時間はあっという間に過ぎ…
気づけば、時刻は午後の8時を回っていた。
各々が黙々と仕事をしていた時。
…コンコン
会議室の扉がノックされた。
「はい、どうぞ?」
佐伯部長が声をかけると、同じオフィスの男性社員が扉を開け、言ったんだ。
「失礼します。北原課長、奥様がお見えになっていますが…」
「……え?」
奥様?
…ってのが誰を指すのかピンとこないくらい、会社に佐里が来ることが信じられなくて。
男性社員の影から顔を覗かせた佐里に、思わず息を飲んだ。

