…バカか、俺は。



新入社員の部下にときめいてどうする!



俺には妻がいるんだぞ!!





…そう、心の中で何度も自分に喝を入れたけど。




翌日から岬由奈という存在を気にかけるようになり…




目で追うようになり…





その年の暮れの忘年会で、俺たちの関係がガラっと変わったんだ。






「岬も瀬尾もあんまり酒強くないんだなぁ。飲ませすぎたか?」



そう言う社員の声に、俺は由奈を盗み見た。




確かに由奈も瀬尾も、顔真っ赤。




支えないと、とてもじゃないけど歩けなさそうな感じだ。




「よし、北原!岬をタクシーで送ってやれー。俺は瀬尾を送ってくから。」




そう指名され、ドキッとしたのを覚えている。




(思えば佐伯部長は、あの頃から瀬尾が気になっていたのかも)




店の外に出て、タクシーを拾う。




「岬、大丈夫?家どこ?」



「えーっと…」



しどろもどろになりながらも由奈は自分の住所を運転手に伝え…



そして後部座席に二人、由奈が俺の肩に頭を乗せる形でタクシーは出発した。





肩に頭を乗せられたからか、由奈の髪の毛からシャンプーの香りがしてドキドキが増す。



「大丈夫?辛くない?」




そんな自分のやましい気持ちを払拭させようと、由奈の体調を気づかい、そう声をかけた。




すると…





「……辛いです、毎日…」




由奈はそう、ポツリと呟いた。