「新入社員のうち、うちの部署には2人入ることになった。ウチには珍しく女性社員だ。新しい観点で物が見れそうだな!どんどん意見出してくれな!」
そう言って、佐伯部長が由奈と瀬尾を紹介したのを、今でも覚えている。
確かに、ウチに女性社員は珍しい。
しかも、2人も。
最初は、ただそう思っただけだった。
それから三ヶ月くらい経ったある日のこと。
他部署に用事があり一時間くらい席を外していた俺。
オフィスに戻ってくると、由奈一人だけ残っていたんだ。
「あれ?岬、一人?佐伯部長は?」
「佐伯部長は専務に呼ばれてそのままお食事に行かれたようです。」
パソコンに目を向けたまま、淡々と答えた由奈。
なんつーか、クールな子だな…ってその時は思ったっけ。
「上司との付き合いは大変だよな。岬は大丈夫?」
「私は…別に……」
パソコンを打つ手を止めて俯いた由奈を、その時は少し不思議に思ったんだ。
なんか聞いちゃまずかったのかな、なんて思って…
上司との関係に行き詰まってるんなら、課長として相談に乗ってやりたいなって、その時は純粋にそう思った。

