佐里との出会いは、高校生の時だった。




学校の帰り、自転車で坂道を下っていた時のこと。




青信号で渡った俺の前に、突然車が飛び出してきて…





“あ、危ない”




事故の記憶は、そこまで。




実際、俺はその車に轢かれ、全身を強打。




その車は走り去っていったようだが、たまたま通りがかった車に乗っていたのが、佐里とその家族で。




佐里の一報により、俺は命を落とさず済んだ。




言わば、彼女は命の恩人なんだ。




しかも佐里のお父さんは、俺の親父の会社の副社長で。



親父は、何度も副社長のところへ訪ねてお礼を言っていたと、後に母から聞いた。




それから…



数ヶ月に及ぶ入院生活の一度だけ、彼女がお見舞いに来てくれたけど、その時はまだ思うように口が動かず話せなくて。




すっかり元気になって退院してから、俺は佐里の家にお礼を言いに訪問した。




ようやくお礼を言うことができて、事故前と変わらない平穏な日常生活が戻ってきた。





その数ヶ月後、街でバッタリ佐里に会ったんだ。





その時、突然こう言われたのを、今でもはっきりと覚えている。





『ずっと好きでした、付き合ってください』と。