椅子に深く座ると、個展に似つかわしくないジャージ姿の男性が目にとまる。


すらっとした長身で、エアコンの風にふわりとなびく黒髪。


会場の隅の隅。だれも見ないような小さな絵を穴が空いてしまいそうなほどじっくりと見ている。



その絵にわたしがつけたタイトルは "pathetic"。英語で「悲愴」という意味だった。




ちょうど元彼に'あの言葉'を言われた頃描いた絵。




ベースを黒く塗りつぶした上から イエローとホワイトを少しずつ塗り重ねた。

暗闇と恐怖のブラック。希望のイエロー。無限のホワイト。





それらすべては わたしの心だった。