「ありがとう。――御礼を言っても言い足りないぐらいなんだが、悪い。自分へのご褒美を貰ってもいいだろうか」
「ご褒美? 何が欲しいんですか」
近衛先輩がそんなことを言ってくるのは初めてだった。近衛も優勝で興奮を隠せないのかもしれない。
「佐々木澪。甲子園もお前の応援が欲しい」
「ふぁ」
「甲子園まで俺に着いてきて欲しい。――澪」
「先輩」
そう言った後、近衛先輩は耳元で『好きだ』と伝えてくれた。じわじわと広がる喜びが、全身を甘く痺れあがらせる。
「連れってって」
近衛先輩の首に抱きついた。掠れた声でも、泣き声でも、きっと伝わると信じて。
「私も、です。好きです」
音は上に響いていくという。青空を見上げる先輩に、私の音色が響いたというならば、私は先輩の心に届きたい。
吸い込まれそうな青い空、空に溶け込みそうに抱きあげられて――その人の見える青空の中に映し出された。
Fin



