先輩は私の、青空ヒーロー。


「確かに。何さまだよ。向こうは一年間、仲間にも内緒にしていたんだぞ」

違う。思いっきり叫びたかった。違う。違うのに。


近衛先輩が今まで頑張っていたのは、部室でしか触れ合っていない私でさえ分かる。

泥だらけのユニフォーム。疲れていても表情に出さないよう頑張る先輩の姿。

数分眠ってしまうほど疲労していても、肩の痛みも酷くても近衛先輩は真っ直ぐに、足元の石さえ存在を感じながら、懸命に青空目掛けて頑張ってきた。



「や、野球部、頑張って! 近衛先輩、頑張って!」


声が、喉が裂けてもいいと大声でぼうと思った。


「近衛先輩はいつもまっすぐだった。三年間努力して来たのはこっちも同じだよ! 今日のヒーローは三年間頑張った野球部! 大物ルーキーじゃない! 皆が三年間見てきた野球部。肩が痛くても大物ルーキーに向かってヒットを打った近衛先輩。近衛先輩の頑張りをちゃんと見て。応援して。声にしようよ! ちゃんと皆で優勝しよう!」



張り叫んだ。爪先から頭の上から、大声で叫んだ。自分の声が今届かないのならば、消えても良いと。だから青空を切り裂くような大きな声で叫んだ。

「私たちが応援しなくて誰が応援するの!」

「あんなに……あんなに頑張ってきたのに」


悔しくて涙が込み上げてきたのを乱暴に腕で拭うと顔を上げた。