「すごいね。やっぱり気づくかぁ。」

そりゃ、なんもなしにチョコレートくれるなんて疑うしかない。

「…じゃあ、甘党くん。これは知ってる?甘いものに少し塩をふりかけると、もとより甘くなるの。」

「知ってるよ。やったことないけど。」

「そう。だからね、チョコレート食べていいよ。」

答えになってない。意味がわからない。

でも食べていいと言われたから、袋を開けて口に入れる。

…やっぱり、何度食べても甘い。だから体が心が満たされていく。

目の前にいる佐藤はポテトチップスを口に入れこちらに近づいてくる。

え?近づいてくる??

状況を理解できない僕は、されるがままに教室の端まで追い詰められ


そのまま唇に一瞬何かが触れた。


途端に甘い。

さっき食べたチョコレート以上に甘い。

「…甘いでしょ。甘党な武藤くん。」

うん。甘い。チョコレートもさっきより甘くなってる。

でもそれ以上にここの空気が甘い。

満たされていく。

「…何勝手にキスしてんの。てかそもそも、佐藤はなんでここにいるの。」

そうだ。僕は日誌を書くためにここに残ってるんだ。

なんで佐藤がいるんだ。

「なんでってそりゃぁ…」

少しずつ、佐藤が近くにくる。

僕の耳元まで来た時、佐藤は言った。

「甘いの好きでしょ。武藤くん。」



















僕はチョコレートより甘いものをこの日見つけた。


Fin