ヒソヒソ…。
うん?誰か居る。
「…朱莉。待って、誰か居る。」
もしかして、スキャンダルだったりして。
そんな興味本位だった。
相手にバレないようにひっそりと歩く。
あれは…。
ヒロと奈々!?
…朱莉。
「…ヒロ?」
そう思って振り返った瞬間に朱莉が大きい声で叫んでた。
言い逃れの出来ない瞬間を朱莉も見てしまったのだろう。
なのに、ヒロは何事もなかったかのように朱莉に話しかけ続けてる。
ふざけんな。
私が怒るより先に黙っていた朱莉が叫んで走って言ってしまった。
「朱莉!?」
「朱莉!!」
ヒロと重なる声。
それだけでイライラする。
ドアが閉まってエレベーターは降りて行ってしまった。
階段から追いかけようとするヒロを私は呼び止めた。
「あんたに追いかける権利なんかないから!まじで見損なった。」
あんなに純粋に好きで居てくれる子が居るのに。
ヒロも朱莉のことそういう風に見てると思ってた。
「え…あれは…違うくて。奈々が泣いてたから。」
普段は強そうに見えても幼馴染の私には分かる。
ヒロには弱い部分が多い。
特に奈々には自分が傷つけてしまったことを今でも引きずっている。
嫌いになって別れた訳じゃないのも知ってる。
だから、余計に腹が立つ。