明日になれば、幸大さんはこの話を忘れているはず。もう会うことなんてないだろうし。

「引きましたよね?」

「引いたというか....。いきなりそんな話聞く事になると思ってなかったから驚いたかな。りさちゃんって既婚者なんだ」

「いいえ。あたしは独身です」

「じゃあ相手が既婚者か」

そう言いながら、マグカップを置く幸大さんを見てあたしもつられるようにマグカップを置いた。

「不倫の恋ってしんどそうなイメージしかないけどな」

「そうですね。しんどいことだらけでしたよ。でも好きでした」

「そっか....」

あたしと幸大さんは、そこで会話が途切れてしまった。