親方のハイエースに全員乗り 現場に向かったんだ。

道中 住職が親方にこう言ったんだ。

住職「社長さん 少し時間かかるかも知れませんが ご了承ください 今のまま作業に入ると 必ず従業員の誰かが怪我します」

すると親方は 緊張な面持ちで 分かりました おまかせしますといったんだ。

そして 暫く走ると目的地の家についた。

車を邪魔にならない場所に停めて 皆おりた。

その家に向かう最中 近所に住んでる おばあさんが話しかけてきたんだよ。

おば「あなた達 この家に入るの?」

K「そうですよ?」

おば「やめた方がいいわよ? ここには幽霊が居るから」

何かこのおばさんは知ってるのか 有力な情報を話してくれた。

住職「何か知ってるんですか?」

おば「あら?あなた お坊さんなの?」

住職「そうです 知ってる事が有れば教えてくれませんか?」

おば「最近 あの家の中から変な音がして困ってたのよ それがなくなるなら 教えてあげるわ」

そして おばあさんが話し始めたんだ。

この家は 廃屋になる前に老夫婦が住んでて。

それで ある日に老夫婦が惨殺される事件が起きた。

強盗目的で押し入った犯人に殺害されたんだって。

犯人は 逮捕されてるらしいんだと。

それから 家の中で 生活してるような音がするようになったとの事。

近所の人達は 恐れて 近寄らなくなったって。

それを聞いた 住職は分かりましたと言い おばあさんにお礼を言うと 行きましょうとその家の前に立った。

住職「ああ 感じるね まだ この中に老夫婦がいる」

K「えっ? 俺は老婆しか見なかったですよ?」

住職「おじいさんの方は 静かなのよ 問題はおばあさん 逆におじいさんは おばあさんをこの家から出さないようにしてるみたい」

そう言いながら 住職は手を合わせて ブツブツとお経を唱えてドアを開けたんだ。

K「あっ」

目の前に この前は居なかった 老父が立ってた。

その老父は すまなさそうな表情に見えた。。

住職「あなた達のお家に上がらせて頂きます」

と 手を合わせて頭を垂れると老父も手を合わせた。

この老父は 仏教らしく 住職が来たからか 少し表情が優しくなった気がした。

そして 老父はすうっと消えてった。

住職「さっ 仏間に行きましょう」

住職の後に着いて 廊下を歩いてくと バシ!ビシッ!と家鳴りがしたんだ。

住職「怒ってるわね」

ビシッ!バシッ!

向かう途中 ずっと音がしてたんだ。

仏間に近づくにつれ 気持ち悪い気分になってく。

親方は 何も感じないのか 周りを見渡しながら歩く。

Тは 多少ならず影響があるのか ビクビクしてる。

そして その部屋に着いて 引き戸を開けると ぶわっと 変な風が吹き抜けた。

住職「ここに居るわね」

住職は 仏間に入り 仏壇の前に座ると数珠を取り出し手に絡めて手を合わせる。

住職「始めます 」

遂に 除霊が始まったんだ。

般若波羅蜜多心経・・・観自在菩薩深心般若波羅蜜多時・・・

仏間に 住職のお経が響き渡ると 俺達の横に 老父が立っていた。

K「おじいさんも来たみたい」

Т「そうみたいだな はっきり見えないけどな」

老父は お経をありがたそうにきいてるんだ。

暫く お経を読み続けると 周りの物が ガタガタ動き始めた。

住職「来たね 天井」

そう言うと 天井から ぬうっっと老婆の顔が出てきた。

ゆっくりと老婆が逆さまに降りてくる。

老婆「憎い・・・憎い・・・」

住職「何が憎いのか?」

住職は 老婆に問うが 老婆は聞き耳を持たずに ずっと憎い・・・憎い・・・と呟く。

老婆「憎い・・・憎い・・・憎い・・・憎い憎い憎い憎い」

老婆が何か黒い煙のような物を体から出し始めた。

すると 老父が すうっと老婆の前に出た。

老父「もうやめないか? 婆さん」

今まで黙っていた 老父が婆さんに語りかけるが 怒りに我を忘れてるためか 聞き入れない。

老婆「憎いぃ!!憎いぃ!!」

荒れ狂う老婆に 住職含め 見える俺達は 目で老婆の動きを追っていた。

四方八方飛び回る老婆 住職は最後の手段を使わざるおえない雰囲気だった。

住職「おじいさん 話があります」

住職は 老父の方に向き直りこう言ったんだ。

住職「おばあさんを強制成仏させますが 宜しいですか?」

老父「・・・・・・はい」

住職「分かりました お婆さんを仏様の御前に連れていきます そこで 成仏してもらいますが いいですか?」

老父「仕方ありません・・・これ以上 婆さんのこんな姿みたくないので・・・」

それを言うと 老父は深々と頭をさげたんだ。

そして 住職が老婆の方に向き直り 再びお経を唱え始めた。

住職「般若波羅蜜多心経!!」

いつもは 穏やかにお経を唱えるのに 今回は激しかった。

老婆 「!? うぐぐっ・・・やめろ!やめろ!」

悪霊には苦しいのか 空中でもんどり打っている。

住職「観自在菩薩深心般若波羅蜜多時! はっ!! 」

住職が 気合を入れると 老婆の周りに 光る輪っかのようなものが現れた。

その輪っかは 老婆を拘束するように体と足に付いた。

そして 身動きが取れなくなった老婆を持参してきた 小さな壺に封印したんだ。

住職は その壺に御札を貼り 袖の中に入れたんだ。

住職「貴方はどうしますか?」

そう 老父に聞くと 老父はこう言ったんだ。

老父「私は 憂いが無くなったので 成仏します」

住職「分かりました では 般若波羅蜜多心経 観自在菩薩深心般若波羅蜜多時・・・」

お経を唱えると 老父の身体が光に包まれて 天に登っていったんだ。

老夫婦が居なくなった 家はシーンと静まり返ったように静かになったんだ。

住職「これで この家を解体できるでしょう おばあさんの事は 私に任せてください それでは 」

と言い 住職は 帰ったんだ。

それから 俺とТと 親方と若い衆で この家の解体を無事に済ませて アルバイト代を貰い 2人で呑みにいったんだ。

あの老夫婦の冥福を祈りながら呑んだ。

それから 1日経って 住職から電話が来たんだ。

無事に成仏させられたとの事で 俺達は安心したんだ。

これで 終わります。