フェンスに寄りかかりながら考える。



葵は幼なじみ。

生まれた時から一緒だから、もう16年間になる。

葵は、すごい人見知りで私以外に友達がいない。彼女すらいたことない。ともだちいないから勉強ばかりして、学年1位の連続。羨ましい。

私は、彼氏はいたことあるけど毎回同じ理由で振られる。
バカだから。顔だけはいいのに。頭が悪い。

そんなのばっか。でも、振られてもイライラするだけでマンガやドラマみたいに悲しくならない。なんでだろう?

いつかわかる日が来るといいな。
それで、マンガみたいなキラキラな恋がしてみたい。





葵にもそんな相手ができるのかな。
葵の隣にはどんな人がいるのかな。
私じゃない違う人。そう思うと胸がチクチクする。こんなの知らない。

(なにこれ。痛い。)

「葵のせいだ。」

あの時の葵の顔がどうしても離れない。

胸を抑えてうずくまる。

「ひなちゃん?大丈夫?」

頭上から声がして上をむくと、そこには病気の原因と思われる人が。

「大丈夫?具合悪い?どこか痛いの?」

「大丈夫。」

「ほんとに?」

「うん」

「良かった」

(まただ。)

葵のほっとするような安心するような笑顔を見たら、また心臓がバクバクし始める。

(なんだこれ。今までなったことない。)

「葵のせいだ。」

「えぇ?どうしたの」

「言いたくない。」

言いたくない。言うのが恥ずかしいの方がしっくりくる。葵は心配そうに見つめる。

「葵のばーか。」

「ほんとに大丈夫?」

「大丈夫」

「見えないんだけど」

「葵のせいだよ」

「え?ご、ごめん?」

キョトンとしながら謝る葵が可愛くて笑ってしまう。

「ふふ、いいよ。許してあげる。」

「ありがとう?」

(落ち着く。)

さっきまでバクバクしてたのがうそみたいに収まる。

「葵いるの落ち着くな。」

「僕もひなちゃんといると落ち着くよ。」

ちょっと照れながら言う葵。

「ほんと?」

「うん」

誰もいない屋上で2人で笑う。

(この時間がずっと続けばいいのにな。)