「もしもし?」
スマホを耳元に持っていき、相手の反応を待つ。
すると、数秒後に。
『あ、先輩ですか?』
聞き覚えのある、落ち着いた声が電話越しに聞こえた。
「か、楓くん…?」
『そうですよ』
なんてタイミングだ。
今わたしの真横には榛名くんがいるっていうのに。
「あ…えと、どうかした?電話くれるなんて珍しいね」
平然を装って、いつも通り話せばいいんだ。
何も動揺することなんかない。
ただ、榛名くんのほうを見ることはできなくて、背中を向けて電話の声がなるべく聞こえないように話す。
『どうかしたじゃないですよ。野上先輩に聞きましたよ。風邪ひいたんですか?』
「あ、あぁ…!うん、ちょっと熱が出ちゃって。今はもう元気だよ」
『ほんとですか?無理して大丈夫とか言ってたら怒りますよ?』
電話越しに楓くんがいて、すぐそばに榛名くんがいるという状況に変な汗が出てくる。

