「立川くんは雛乃のために身を引いたのかー」
全て話し終えると、杏奈は眉間にしわを寄せながら複雑そうな顔をしていた。
「いい子すぎじゃん。なかなかそんなこと自分から言えないよ?
そこで強引に雛乃のこと奪うくらいのこと言ってキスしちゃえばよかったのにさー」
「ちょっ、そんな軽く言わないでよ…」
「まあ、立川くんいい子だからそんなことしないだろうけどさ。まさか雛乃の気持ちを優先して、応援するために後輩のままでいるって言ったのはほんとにすごいことだよねー。普通言えないし」
「うん……」
あの日から楓くんとは学校では会わないし、連絡も取っていない。
もうすぐ夏休みに入るから、ますます会う機会は減る。