「さっきは勢いで雛乃先輩を泣かせるような人には渡さないって言ったけど、そもそも俺のものでもないのに何言ってんだって話ですよね」


重い雰囲気を吹き飛ばすように、楓くんが軽く笑った。



「なんか俺がいろいろ喋りすぎましたね。しかもめちゃくちゃ空気重くなったし」


フゥッと、ひと息吐くと楓くんはわたしの手を取って、その場から立ち上がった。



お互い正面に向き合って、少し上を見れば視線がしっかり絡み合う。



「自分の気持ちには正直にならないと、絶対後悔します。もし、いま好きだって気づいたなら、手遅れにならないうちに、想いを伝え……」


「む、無理……だよ……っ」



とっさに遮ってしまった。


せっかく、楓くんが自分の気持ちを押し殺してまで背中を押してくれているけど、もう榛名くんは……。