「……よかった。今は俺しかいないんで、泣くの我慢してたら泣いていいですよ」
「優しすぎるよ……っ」
「だから、言ったじゃないですか。
好きな人は特別だって」
わたしの背中を軽くポンポンっと撫でながら、優しくさすってくれた。
「……もう大丈夫ですか?」
「っ、い、今は何も考えたくない……かな」
これ以上、いろんな憶測を浮かべても、
いい思いはしない。
だから、気持ちを落ち着かせるために、
少しの間だけ、楓くんの胸を借りた。
***
「楓くん、ありがとう……。
も、もう大丈夫だから」
わたしが声を押し殺しながら泣いていても、楓くんは何も聞いてこようとはせず、離さないでいてくれた。
こういうところが紳士的で、
楓くんの素敵な一面だとあらためて思った。

