幼なじみの榛名くんは甘えたがり。




廊下に連れ出されて、無言でひたすらわたしの手を引いて歩く楓くんの後ろについていく。


それから階段を上り、着いた場所は屋上だった。



重い扉が開き、中に踏み入れると、扉がドンッと音を立てて閉まった。


ずっと前を向いていた楓くんが、こちらを振り返った。



そして、何も言わずに、わたしを抱きしめた。


抱きしめる寸前に見えた楓くんの表情は、なぜかわたしより苦しそうだった。



「泣かないで、先輩……。
俺がそばにいるから」


「っ……」



楓くんの抱きしめる腕が少しだけ震えているのがわかる。



最低なわたしは、抱きしめられたまま、楓くんの背中に腕を回すことができない。



せっかく連れ出してもらったのに、
わたしの頭の中は、さっきまでの出来事で埋め尽くされてしまっている。