幼なじみの榛名くんは甘えたがり。




耳元で聞こえた声に、少しだけ安心してしまった。

さっき、あれだけ冷たい態度をとったのに、どうして……っ。



わたしの視界は、

楓くんの大きな手のひらで覆われていた。



おかげで、視界から榛名くんたちを遮ることができて、溢れてくる涙も見られなくてすんだ。



「へー、王子さまの登場?」


榛名くんの表情は見えないけれど、口調からして呆れているように聞こえた。



もう早く、この場から離れたい……。


思わず助けを求めるように、後ろにいる楓くんの制服を少しだけ握った。


すると、そこから何かを感じ取ってくれたのか、安心させるように空いているほうの手で、そのまま握ってきた。



そして、静かな空間で
楓くんの低くて、しっかりした声がはっきり言った。



「……雛乃先輩を泣かすような最低な人には絶対渡しませんから」


そう言い放つと、わたしの手を引いて教室を飛び出した。