「……なんで泣くの?」

「っ……」


すると、さっきまで止まりそうになかった榛名くんの動きがピタッと止まった。


そして、上から優しくわたしを抱きしめてきた。



「雛乃が答えられなかったってことが、答えだって僕は受け取ったから」


それってどういう意味と聞こうとしても、うまく声が出てこない。


そして、榛名くんはわたしの耳元でささやくように言った。



「雛乃の気持ちが僕に向かないなら、こっちにも考えあるから」


最後に、わたしの唇をなぞりながら。



「これからは僕から雛乃に触れたりしない。雛乃が僕を求めてくるまで何もしない」


この言葉の意味をすぐに理解することはできなかった。


だけど、まさかのかたちで、知らされることになるとは、この時のわたしは思ってもいなかった。