「楓くんにも、そんな可愛い顔見せてんの?」
月明かりが照らした、榛名くんの表情は、
ふてくされていた。
「……見せてるなんて言ったら、その口塞ぎたくなる」
「っ……」
榛名くんの綺麗な指が近づいてきて、
唇に親指をグッと押しつけてきた。
さらにぶわっと体温が上がる。
「ひなの全部、欲しくなる」
「は、はるなく……」
「僕に触れられるの嫌?」
「え……?」
この状況で、そんな質問をされるとは思っていなかった。
答えを求められても、思考が正常に動いているとは言えない今のわたしには、無理な質問だ。
「嫌だったら逃げなよ」
「っ……」
なにそれ……。
その選択をわたしに迫るのはずるいと思う。

