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「ねぇ、雛乃?」
「なぁに?」
放課後。
帰る準備をしていたら、杏奈がわたしの席にやって来た。
「そういえばさ、言い忘れてたんだけど。あの後輩くん……立川くんだっけ?大丈夫だった?」
「え?」
杏奈の口から楓くんの名前が出てきて、
一瞬ひやっとした。
実は風邪を引いたあの日以来、楓くんとは会って直接話してはいない。
榛名くんが勝手に楓くんとの電話に出てしまったせいだ。
もしかしたら、勘のいい楓くんのことだから、何か気づかれてしまったのではないかと思うと、なかなか直接話せない。
学年が違うから学校で会うことはないし。
だけど、わたしの風邪の具合を心配してくれて、ちょくちょくメッセージのやり取りはしていた。
メッセージのやり取りで、何か聞かれたりはしなかったけど……。
でも、直接顔を合わせたら何か聞かれるに違いない……。

