榛名くんの顔は何やら疲れたような顔をしていた。
そして、スッとわたしの横をすり抜けた時。
「っ……」
ふわっと、甘くどい、きつい……
香水のような匂いがした。
ドクッと、心臓が変な音を立てた。
いつもの榛名くんの匂いじゃない。
甘すぎて、くどいくらいの
この匂いは、わたしの大嫌いなものだ。
「いつまでそこで突っ立ってんの?」
「……あ、えっと」
ずっと玄関のところで突っ立ったままのわたしに、榛名くんが声をかけてきて、ハッと我に返った。
どこに行ってたの?とか
誰と一緒だったの?とか
頭の中に浮かぶのは、そんなことばかり。
けど、その言葉たちは喉の奥で詰まって、出てこない。
変なの……。
どうして、こんなにモヤモヤしなきゃいけないの?
自分の部屋着の裾をギュッと握った。

