ー桃音sideー
「まって。」
寝ようとしたら引き止められる。
今更謝ったって、許してやんない。
私は顔を背けて寝ようとした。
そしたら、がばっと布団をとられた。
「な、なに?!なんか、ようなの?」
ほんとは言いたい。顔も見たくない!ってはっきりと言いたいのに…。
奏斗くんは裏切らないって心の片隅で思ってる私がいて、
話を聞くべきだと叫んでる。
でも、ホントは怖い。それで、
しょうもない喧嘩してないで仲直りしろよなんて言われたら、
そう考えると聞いたくないって思って逃げてしまう。
私ほんと弱い…。
そして多分気づいてる。奏斗くんも。
私が本当は話を聞きたがってるって。
だから部屋から出ないんだと思う。
「桃音、ベッドから出てきて。」
「ね、たいから。おやすみ!」
素直じゃない私は無視して寝ようとする。
「じゃあ、そっち行く。」
奏斗くんがベッドの横に来てドサッと座り込む。
「勝手に約束してごめん。速水と蒼がどうしても来たいって。桃音に、話があるんだって聞かなくてさ。」
奏斗くんの顔、見れないけどきっと後悔した顔してるよね。
こんな顔、奏斗くんには似合わないのに…どう言えばいいのか分からない。
「な、なんにも思ってないから。気にしてないし。夜遅いし早く寝よ?大丈夫だから。」
「桃音は優しいんだな。絶対に人の悪口言わねーし。そこんとこ、ほんと昔から変わんねーな」
奏斗くんがそう言って、私が頭までかぶってる布団をとる。
「か、返してよ。優しくないよ別に」
「桃音、速水と話すチャンスだと思う。あいつは、桃音と話たがってる」
「琴乃が?私に?」
「今更何を話したがるの?戻りたいって?私に言いに来るの?可愛そうだと思って?ふざけないでよ。」
琴乃が何を思って、何しに来るのか、そんなの私にはどうでもいい。
なんで?なんで今来る?
私が学校で1人なのが可愛そうだと思ったの?
やめてよ。そんな情けなんていらない。1人だって慣れっこ。
会いたくないし、顔も見たくない。
「それは、あいつから聞かねーと分かんねーよ。」
「そんなの、分かってるよ!!だから、なんのために今更来るの!?傷つけたって謝りに来るの?それとも、嘲笑いに来るの?どっちにしても私は会いたくないの!」
気づいたら叫んでて。
もう頭がぐっちゃぐちゃで。
「桃音」
奏斗くんに名前を呼ばれる。
なんのために呼ぶの?可哀想だなって思ったから?
「奏斗くん、もう情けかけるならやめて?私これ以上惨めになりたくないの。」
「情けなんてかけてねぇよ。」
「なら、なんで?なんで奏斗くんは、私にこんなに構うの?学校では女の子に無愛想じゃない!なんで?なんで私のことほっといてくんないの!?」
奏斗くんに八つ当たりしてることくらい分かってる。
でも、奏斗くんが構う理由がわからない。
「奏斗くん、ごめんね?気にしないで。」
八つ当たりなんて、私何やってんだろ。
「奏斗くん、ごめ「桃音だからだよ。」」
言葉を遮られたと思ったら、ぐいって手を引かれてベッドの下で座ってる奏斗くんの胸に引っ張りこまれる。
「な、なんで。」
「桃音だからだよ。俺は女なんて嫌いだ。顔しか見てねぇ奴らなんて興味なんてなかった。でも、お前だけは違うんだよ。」
「奏斗く、「好きだよ」」
え?
「今…。」
「なんで構うのか?そんなの好きだからに決まってんだろ。ほっとけない。桃音がほんとは速水と仲直りしたいって思ってることくらい分かる。手伝ってやりたいって思った。」
「わ、わたし。」
いきなり好きって言われて、
あげくに私の考えてること全部お見通しで見透かされて。
もう頭がパンク寸前の私。
「返事はしなくていい。これからじっくり好きにさせてやる。でも、俺は桃音の昔からの笑顔のもと、取り戻したい。」
「奏斗、くん!ごめん、なさい。」
そこまで考えてくれてたの?
好きがまだわからない。男の子なんてみんな同じ。そう思ってた。
「ばか。何泣いてんの。」
「だ、って、私。ひどいことばっか。ごめんなさい。」
可愛い子の言いなりになって、告白してくる男子はみんな顔ばっかで中身みてくれてなくて、いじめられてても助けてくれないくせにいいイメージもってもらおってずっと告白してくる。
そんな最低なヤツばっかだって思ってた。
「奏斗くん。明日、一緒にいてくれるの?」
そしたら、奏斗くんはちょっと驚いたような顔したあとに笑って、
「当たり前」
って言ってくれた。
「ごめんなさい。好きって言ってもらえたのに…。返事もう少し待って。真面目に考えてみるから。だから、」
「大丈夫、考えなくてもいいから。」
そう言うと奏斗くんは顔を近づけてきて、
「考える暇もなくおとしてやるから」
って。
当たり前のように私はタコ化。
「真っ赤」
「う、うるさいっ!ねるっっー!」
「ん。起こして悪かった。」
「大丈夫、あ、ありがとう」
「ん。おやすみ」
そう言って私が寝るまでずっとそばにいてくれた。
