ー奏斗sideー
「び、びびってない!いってくる。」
いじられると悟ったのか、逃げるように浴室に行く桃音。
「おもろ。」
そんな時着信音がなった。
俺の携帯か。蒼からの着信。
俺は自室に戻った。
「やほやほ!奏斗元気か?」
「あーぼちぼち。んで、なんだ?」
「お前俺のメール返信してねーで既読だけつけやがってー!」
「あ、忘れてた…」
「そんなことだろうと思ったよ。」
「わるかったって。んで、デートはどうだったんだ?」
蒼はふふふ〜と笑って、
「最高でした!」
と言った。
惚気話ならきるぞ。
「惚気のために電話したんじゃねーって!きるなよー!」
俺の考えがわかったらしい。
「はいはい。んで?」
「琴乃やっぱり後悔してるってさ。なんとか聞き出しました。」
口調からしてほんとに苦労したんだろう。
「そうなのか。ならなぜだ?」
「お前、覚えてる?中学の時の同級生の雛川華って女の子。」
雛川?あー、あのいかにも女子っぽいやつか。嫌でも脳裏に染み付いてる。
「覚えてるよ。」
「どうやらそいつと、高校で新しく友達になった川上ってやつが原因らしいんだよ。」
「どうゆうことだ?」
「それは直接、琴乃に聞いてよ。」
は?どうやって聞くんだよ。
「今ここにいんだよ。琴乃〜!」
蒼が速水を呼ぶ声。その後に、
バタバタって足音がして、
「ん?」
速水の声がした。
「俺今、奏斗と電話してんの」
「奏斗くん?ってあの?知り合いだったんだね。」
「小中の同級生なんだよ。琴乃ちょっとこっちに来て。」
「うん?」
電話越しらでなんかイチャつくような声。
変わるならはやくしてくれ。
「あ、速水です。どうかした?」
電話越しに聞こえた速水の声。
「おー。俺、だけど。ちょっと、聞きてーことあってさ。」
「あ、桃音が倒れた日のことごめんなさい。任せちゃったね。」
「別に。俺がしたかったから運んだだけだし気にするな。」
「聞いたの?桃音から。」
震える速水の声はやっぱり、桃音のことを大切に思ってるとしか思えなかった。
「あぁ、結構聞き出すの苦労した。」
「桃音、隠し事上手だしね。しかもなかなか口硬い。」
「よく知ってんじゃん。」
「桃音のことだもん。」
「なんで嫌いなんか言った?」
俺はどうしても知りたくて直球に速水に聞くことにした。
「あの日、私ね雛川達に呼び出されたの。そして、言われたのよ。ハブるから、気に入らないのよって。桃音と友達やめないと、桃音も無視するとまで言い出した。だから、桃音を巻き込みたくなくて…。」
速水の声はだんだん小さくなって、最後らへんは泣きながらなのか、しゃくり上げながら言葉を繋げてた。
よほどの決心がいるだろう。速水は自分を犠牲にして桃音を守ることを決めたんだ。
それが逆に傷つけることになった。
結果がすれ違ってしまったんだ。
「ごめん。こんなこと聞いて。」
「いいよ、別に。桃音、私のこと憎んでるよね…。当たり前だよね。いきなり言われちゃうんだもん。私だったら立ち直れない。」
「よしよし。」
泣いてる速水を蒼がなだめてやってるんだろう。
「でもね、私気づいたの。ほんとバカだった…。」
「何に気づいたんだ?」
「雛川たちのターゲット。私じゃなくてほんとは桃音だってことに。昨日あいつらに聞き出したの。言われたわ。バカにも程があるって。」
そんなひどい話があるのか?
「私は守れなかった。それどころか、傷つけただけだなんて…。」
「だいたいはわかった。」
「ごめんね。こんな話…。」
「いや。俺も聞き出して悪かった。」
「ううん。桃音のこと、ありがとう。私はもう戻れないし…。」
速水はほんとに自分のことが許せないんだろう。
桃音は、速水がいたから楽しかったと言ってた。桃音の支えだった。
速水もそうなんだ。桃音がほんとに好きだったんだな。
「琴乃、もう一度桃音ちゃんと仲良くなりたくない?」
蒼が速水にそう言う。
速水は、
「もちろんなりたいよ。」
って蒼に返す。
「なぁ、奏斗。琴乃と桃音ちゃんを仲直りさせるってできないかな?」
「それは…。桃音もそれを望んでると思うけどどう話すかなんだよな。」
「あっ!いいこと思いついた!」
蒼がひらめいた!っと言う感じに大きな声で言う。
「奏斗、今桃音ちゃんの家に2人なんだっけ?親いないんだよな?」
「あーそうだけど?」
「明日の夜、琴乃とおじゃましてもいい?」
「え?無理だよ!」
速水がむりむり!っと蒼に言う。
「桃音に黙ってか?」
「そんなの、桃音に悪い…。」
「桃音ちゃんには内緒で行って、わけを説明するんだよ!」
「前もって言った方が桃音も心の準備ってもんがあるんじゃないのか?」
「そうだよ、蒼と私が押しかけてもし失敗でもしたら絶対にもう元に戻れないよ。」
「じゃあ、桃音ちゃんには奏斗が伝えておいてよ。」
「は?なんで俺なんだよ。」
「俺、桃音ちゃんと話したことねーんだもん仕方ねーじゃん。」
「ならそんな案やめといた方がいいんじゃねーのか?」
「やってみるだけやってみようぜ!!学校始まったらますますぎくしゃくするだろー?」
「桃音、また1人…。」
学校が始まったら助けてやる機会が少なくなる。
仕方ねーやるしかねーか。
「俺から言っとくよ。明日の夜だろ。」
「おぉ!頼む。俺は今から琴乃とあそぶからさ〜。」
ばしっ!
「な、寝るから!?」
「はいはい。そんなこと言っちゃっていつも寝ないのにね?」
蒼、お前イチャつくならでんわをきれ。
「きるぞ。」
「おー、じゃあ任せたぞー!」
「ありがとう。奏斗くんよろしく。」
