「愛している桃音の世話は、苦痛なんて感じなかった。泣いている桃音も、笑っている桃音も、私の宝物なんじゃ。」









「それ、桃音が聞くときっと喜びます。」









桃音の笑う顔が目に浮かぶ。









「桃音のこと、思い出してくれたみたいじゃなぁ。」









「はい。もねちゃん、ですよね?」








「あぁ。桃音のことをもねなんて呼ぶ子は奏斗くんくらいしかいなかったからね。」











「俺もなんでもねって呼んでたのか今では不思議に思います」










「それが子どもというものじゃ。そろそろ時間が来てしまうから、本題に入らせてもらうよ。」









初子さんは真剣な表情で、









「桃音のこと、頼んだよ」








といった。









「桃音の笑顔、取り戻してやってほしい。琴乃ちゃんとは、ほんとに仲良くしていたぶん傷が深いと思うが…。」








「なぜ、喧嘩したのか、もっとよく調べてみます。任せてください!」








俺は心からそう言った。








「ほんとに奏斗くんは頼もしくなったなぁ。ありがとうね、ほんとうに。」









そう言うと俺の手を握って










「奏斗くんのそういう所はお父さんによく似たんだねぇ。」








と言った。









「父さんのこと、なんか知ってるんですか!?」








俺の父さんは、俺が生まれたすぐに病気で他界してしまった。









「奏斗くんのお父さんとうちの娘は同級生だったんだよ。お父さん、ほんとにたくましい人じゃった。今の奏斗くんみたいにねぇ。」










「父さん、やっぱりすごい人なんですね…」










母さんは父さんの話をする時いつも幸せな顔をして話す。








それくらい、愛し合ってたんだと思う。









「奏斗くん、そろそろお別れのようじゃ。」








「桃音のこと、任してください。」







「よろしくね。」






そう言って初子さんは光の中に消えてしまった。







握られていた手から伝わる、初子さんの手の温かさは、









桃音の笑顔くらいに温かかった。





ー奏斗sideー 終