ー奏斗sideー
桃音の過去がこれほど重いものだとは思わなかった。
いじめについても、ただ愚痴を言われただけだろうと思っていた。
「桃音、俺男だけど大丈夫なのか…?」
男嫌いなら俺これはまずいんじゃ。
「なんでだろう。奏斗くんだけは、初めてあったとから大丈夫だったの。」
「それはだいぶ昔の顔見知りだったからか?」
「分からない…。」
「ありがとな。話してくれて」
「聞いてくれて、ありがとう…」
そう言った桃音はもう寝そうで、
「桃音、ねてもいいよ。」
そしたら、桃音は、
「やだ。」
っていう。
「なんで?」
「奏斗くん…。」
?聞こえなかった。
「俺が、なに?」
「…いなくなる。」
「え?」
「だから、」
桃音は顔を真っ赤にさせて、
「寝たら奏斗くんいなくなる…でしょ?」
って言った。
いや、その顔はやばい。
涙目のそれはくそ可愛かった。
「いなくなんねーよ。ここにいるから。」
「でも、やでしょ?ごめんね。やっぱり戻ってくれて…」
「俺がここにいたの。ほら、寝ろ。」
カバっと布団をかぶせてやる。
「…ありがとう。奏斗くん。おやすみ、…奏ちゃん…」
?奏ちゃん…?
「桃音、今…」
「スースー」
寝たか…。
それより、奏ちゃんって。
奏ちゃんは俺が幼稚園の時のあだ名。
思い出した。
桃音は、「もねちゃん」だ。
俺が幼稚園の年長の時、仲良かった女の子。
小学校が離れてしまうと知った時はお互いが大泣きして、お母さんたちがこまったいたのを思い出した。
そうか。お前が…。
俺の初恋の子。「もねちゃん」
それが今目の前にいる桃音。
どうりで、最初から気にはなってた。
「もねちゃん。久しぶりだな。大きくなったな。」
そう言って桃音を抱きしめた。
こんな小さな体にどんだけ重いものを背負っていたのか俺にはわからない。
でも、
俺が支えたい。助けてやりたい。
そう思った。
ー奏斗sideー 終
