ー奏斗sideー
「泣いた?」
ふと思ったことを聞いてしまった。
泣いてないってあいつは言ってたけどあれは多分泣きあと。
「はぁ。今日も疲れた。」
風呂に入って部屋に戻ると、電話がなった。
「もしもし。」
「お、奏斗か?俺だよ蒼。久しぶりだな。」
深部 蒼。スポーツ名門の高校に進学した、幼なじみ。
「久しぶりだな。珍しいな、蒼から電話かけてくんの。」
「いや、ご報告にね。俺さ、速水 琴乃と付き合ってんの。」
「は!?速水の彼氏って蒼かよ!」
「塾でであってな。ほんと、ベタ惚れです」
「お前らしーな笑で、どした?」
「いや、琴乃がさ、今度の土曜のコンサート一緒に行けないって言うのを伝えといてほしいって。」
「そうなのか?小野寺は知ってんのかな?小野寺って、桃音ちゃんって子?琴乃が親友っていつも嬉しそうに話してた子か。多分知らんと思うな。」
「え、どしてだ?」
「琴乃が今日泣いて帰ってきたからな。喧嘩でもしてきたんじゃね?」
「そうなのか!?」
「いや、多分だけど。俺ら今日塾の前に待ち合わせしてたんだけど、琴乃泣きながら来てさ、今俺の家で泣き疲れて寝てんの。」
「そうなのか…。小野寺との喧嘩か?」
「原因は聞かされてない。ただ泣いてただけだからなー。桃音ちゃん泣いてなかったのか?」
「いや、、わからん。あいついっつも笑ってんだよ。」
「無理させてやんな?笑うって壊れた瞬間に終わりだ。」
「壊れちまうってことか。まー明日にでも桃音に聞いてみるよ。」
「よろしく頼むわ。とりあえずのご報告でした〜」
「はいはいー。じゃ、切るわ。おやすみ。」
あの気の強い速水が泣くなんて、
小野寺との喧嘩としか思えねーな。
コンコン
「小野寺、起きてるか?」
寝てんのか?なんか元気なかったしな。
いや。あったっちゃあったか?
らしくなかったがあってるか。
「入るぞ…?」
扉を開けたら電気が消えてて、
スースーっていう寝息が聞こえる。
「小野寺?」
ベッドで寝ている小野寺。
寝顔がまたかわいい。
その時、小野寺の目から涙出た。
泣いてる…?
こいつ。無理しすぎだっつの。
たしかに泣き声を出したわけじゃねーし、
行ってきたわけじゃない。
でもたしかに小野寺は泣いてる。
たとえ寝てたとしても、夢の中で一人で泣いてるんだろ。
「バカ野郎が。もう壊れかけてんじゃねーかよ。」
小野寺の頭を撫でてやった。
それしかできない自分に嫌気がさすが、
今起こして問いただしても隠すに決まっている。
何があったか速水に聞くしかないな。
明日からちょっと見てみるか__
小野寺の部屋をあとにして、
俺は眠りについた。
ー奏斗sideー 終