3日分の給料をもらうと琉海は早速海に向かった。

「姉さんたち、姉さんたち」

 久しぶりに見た姉たちは少し魚っぽく見えた。

 人魚なのだから半分は魚なのだが、琉海は自分がずいぶん人間に馴染んだのだと実感する。

 自分の体も水に触れると鱗が浮き出るが、なんだかそれらは姉たちの物とは違うように思えてしまう。

 体が変わると心まで変わってしまうのだろうか。

「それで姉さんたちに綺麗な貝や珊瑚なんかを取ってきて欲しいんだ、で、できればそれを加工するところまでお願いしたい」

 琉海は海の物で作ったアクセサリーを道端で売ることにしたのだった。

 一文無しの琉海に最初から店舗型は無理で、仕入れが限りなくただに近いもの。

 それに加え琉海の強みは何か?そういったものを必死に考え導き出したのがアクセサリーの路上販売だった。

 琉海には海という無限で無料の商材があり、姉たちという強いスケットが大勢いる。

 これを使わない手はない。

『海のアクセサリー琉海の店』だ。

 琉海自身はアクセサリーにまるで興味はなかったが、姉たちの多くは貝殻で作ったネックレスやブレスレットを身につけていた。

 そして琉海の店は見事に当たった。

 姉たちが採ってくる貝や珊瑚はとても珍しく美しいものばかりだった。

 アクセサリーとして加工しなくてもそのままでも売れた。

 カップルが多く訪れる海辺だったのも幸いして、男たちは女たちへの贈り物として、女たちは上手に男たちにねだった。

 調子にのって『人魚が作った恋を引き寄せるアクセサリー』とネーミングをつけたらこれがまたうけた。

 琉海の店で買ったアクセサリーを身につけると素敵な恋人ができるというジンクスがどこかで生まれ、連日若い女性からそうじゃない女性までもが店を訪れるようになった。

 女たちは老いも若きもいつも素敵な恋を求めているのだ。