牛丼を食べ終わると琉海は未來に教えてもらった通りに電車を乗り継いで海に向かった。

 やけに白い砂が敷き詰められた人工の浜辺の向こうに見える海は汚れた色をしていた。

 琉海は初めて青くない海を見た。

 匂いも臭かった。

 人気のない場所を見つけるのが一苦労で、琉海にとっては海じゃないような海を見にやってくる人たちが後を絶たない。

 人工浜沿いをしばらく歩くと、小さな埠頭があり、その先はわざとらしく作られた岩場があった。

 海の反対側には緑が植えられていて細長い公園になっていた。

 海を眺めるために置かれたベンチはカップルたちに占領されていた。

 公園の終わりに1つだけ空いているベンチがあった。

 近寄ってみるとカモメのフンで汚れていて、それを避けて隅っこに腰かける。

 やっと周りに誰もいなくなると、人目の付きにくい岩場の影に移動する。

 琉海が海に向かって呼びかけるとすぐに姉たちが顔を出した。

「東京の海は汚くてお肌に悪いわ〜」

 琉海は昨日起きたことを全て話して聞かせた。

 もう1人の王子であるかも知れない未來を見つけたことから今朝の成り行きまで。

「ラッキーじゃん」

 姉たちは喜んだ。

「1人は押さえたんだから、次はもう1人」

「公然と2人と契るのが無理みたいだったら、こっそりもう1人の方とも契りを結ぶのよ」

「やだそれって不倫とかいうやつ?」

「結婚してないから不倫とは呼ばないんじゃない」

「ねぇ、姉さんたち!」

 琉海は気になっていることを口にしてみた。

「あたし本当に契ったのかな」

 姉たちは顔を見合わせる。

「もし未來が陸の王子だったら、もう少しなんかこう、ないのかな?」

「なんかって?」

「だって目標達成したんだよ。ジャジャーンって音が鳴るとか、周りがキラキラキラッってなるとか。そういうのあっても良さそうじゃない?」

 姉たちは顔を見合わせる。