琉海は男と一緒に地下鉄に乗り、それから地上の電車に乗り換えしばらく走ったところで降りた。

 駅から少し歩くとさっきの東京タワーほどではないが、空に届くのではないかと思うほど高い建物の前に来た。

 その前にパトカーが止まっている。

 背の高い男2人と制服を着た警察官が1人。

 男2人は大冴と未來だった。

「ああっーーーーー!」

 琉海に気づいた大冴が叫ぶ。

 未來と警察官が振り向いた。

「あいついたーーーー!」

 大冴はすごい勢いで駆け寄ってくると琉海の肩を強くつかんで揺さぶる。

「貴様、どこ行ってたんだよ。心配したじゃねぇか!ちんたらはぐれてんじゃねぇ。また腹が痛くなったらどうすんだよ」

「まぁ、まぁ、まぁ、大冴落ち着けって。とりあえず見つかって良かったじゃん」

 未來が獰猛な犬のようになった大冴をなだめる。

 大冴が自分をこんなに心配していたとは意外だった。

「ごめん」

 琉海はぼそっと謝る。

「でももう迷惑かけないから。あたし、これからはこの人と一緒にいることにした。でも大冴と、えっと未來とはこれからも友だちってことでヨロシク」

 琉海はぺこりと頭を下げた。

 顔を上げると大冴が冷めた目をしてでもよく見るとその奥に怒りを宿して琉海を見ていた。

「この人って誰だよ」

「あ、そうだ紹介しないとね」

 琉海は振り向く。

「あ、あれっ」

 男はいなかった。

 辺りを見回すがさっきまで琉海と一緒にいた男は忽然と姿を消していた。

「俺、おまえが頭おかしいの忘れてた。腹の病院じゃなくて頭先に診てもらった方がいいな。そのおまえがこれから一緒にいるっていう透明人間に連れて行ってもらえよ。俺はもう知んねぇ」

 大冴は警察官に「ってことで見つかりましたんで」と声をかけると建物の中に入って行ってしまった。

 パトカーもいなくなり琉海と未來が残る。

 2人の目が合う。